株式会社エスエナジー(東京都港区、山根 絵里菜代表)が、5月29日に毎月の電気代が1万円まで無料になるサービス「タダ電」を発表しました。
このエスエナジーがどんな会社なのか、また1万円まで電気代無料で使うのは本当に可能なのかどうかを、FPが考察したので解説いたします。
筆者自身、新電力から東京電力「従量電灯B」に先日切り替えたので、新しい電力サービスの登場には注目しています。
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エスエナジーってどんな会社?
エスエナジーは、2023年5月29日に「タダ電」サービス開始のプレスリリースを出しました。
新しいエネルギーサービスの企画・開発・運営を行う株式会社エスエナジー(本社:東京都 港区、代表取締役兼CEO:山根絵里菜)は、2023年05月29日(月)より、毎月の自宅の 電気代が10,000円までタダ(無料)になる『タダ電』を開始いたします。
出典:PR TIMES
サービスを運営する、株式会社エスエナジーのホームページは以下です。ページがなんと5枚だけのごく簡単なサイトで、情報量はほぼありません。
エスエナジーについてもっと詳しく調べてみる
以下のアイティメディアの記事によると、エスエナジーの会社所在地は東京都港区で、2020年の設立のようです。
一般社団法人エネルギー情報センターが運営する「新電力ネット」によると、エスエナジーは2023年1月の販売実績で、低圧(電灯)が1千kWhとごくわずか。
電力販売量1千kWhという数字は、新電力ネットに掲載されている「全国の販売量(低圧・電灯)ランキング」でエスエナジーは456件中、なんと同率最下位という低さです。
エスエナジーのホームページには資本金や売上高の記載がありませんでしたが、新電力ネットのデータが正しいものと仮定すると、電力販売をメイン事業とする同社の経営状況は相当厳しいのではないかと推測されます。
なお、全国約600万件の企業情報を掲載する「全国法人リスト」の登記情報によると、2020年から2021年にかけて、エスエナジーは法人の所在地を3回変更しています。現在の住所情報は「東京都港区南青山3-10-21」。以下のT’S BRIGHTIA南青山EASTに入居しているようです。
エスエナジーってどんな体制?
現在、エスエナジーのホームページで代表取締役兼CEOとして記載されているのは、山根 絵里菜氏という人物。会社の従業員数は不明です。エスエナジーはどんな体制なのか、調べてみました。
エスエナジー代表の山根 絵里菜氏とは?
資源エネルギー庁「登録小売電気事業者一覧」によると、エスエナジーの登録は2018年10月、代表取締役は「熊谷裕滋郎」氏と記載されています。
どうやら、小売電気事業者として登録した時と現在の代表者は違っているようです…
前述のアイティメディアの記事によると、「登録事業者から株式譲渡を受けた」旨の発言がありました。この熊谷氏から、山根氏が株式譲渡を受けたということなのでしょうか。
──エスエナジーさんについて教えてください。小売電気事業者としての登録は18年に行われていますが、会社設立年は20年となっています。事業を他社から継承されたということでしょうか?また過去に電気小売事業を展開されていたらサービス名等を教えてください
出典:アイティメディア
エスエナジー:継承ではなく株式譲渡となります。過去、サービスは展開しておりません。
「山根 絵里菜」でウェブ検索しても、それらしい人物はヒットしませんでした。推測ですが、ごく最近に代表となったのだと思われます。
元代表?の熊谷裕滋郎氏について
求人サイト「doda」に、エスエナジーの資本金情報がありました。
2023年6月更新されており、資本金1300万円とのこと。電力会社としては、かなり小ぶりな規模ではないかと思われます。ここでも、熊谷裕滋郎氏が代表として記載されています。
ちなみに「熊谷裕滋郎」でウェブ検索すると、「Bitdenki.jp」のサイトがヒットします。ビットでんきは、現在のエスエナジーのサービスとしても記載されています。現在のエスエナジーは、熊谷裕滋郎氏から事業を引き継いでいるのは間違いなさそうです。
株式会社シトラスとの関係は?
エスエナジーについて調べていくと、「株式会社シトラス」という会社にも行き当たります。以下の「エネルギー情報局」のサイトには、エスエナジーが「※令和2年8月1日 株式会社シトラスより事業承継」という記載があるのです。
そこでエスエナジーと株式会社シトラスの関係を調べていくと、環境省の以下のページがありました。「(株)エスエナジー(旧:(株)シトラス)」と記載があります。
エスエナジーが、シトラスから電気事業を引き継いだことは間違いありません。アイティメディアからの取材で、「事業承継ではない」と言い切っていたのはなぜなのでしょうか?
ちなみに株式会社シトラスとは、以下のコンサル/広告などを手掛ける会社のようです。
1万円まで電気代無料ってホント?
最後に、タダ電の「1万円まで電気代無料」という宣伝文句が本当に可能なのかを考察します。
タダ電の「電気需給約款」を要約
以下は、タダ電の「電気需給約款」からの一部抜粋です(2023年4月1日適用)。
約款のうち電力料金にかかわる部分を要約すると、以下の3点になると言えます。「電気料金」「電力量電気料金」「電力量料金」と、よく似た用語が登場しますが、用語については原文のまま抜き出しています。
- 電気料金は「最低電気料金、電力量電気料金、燃料費調整額および再生可能エネルギー発電促進賦課金の合計」
- 最低料金は0円、電力量料金は1kWhあたり65.00円
- 電気料金が無料となる場合には、燃料費調整額も再生可能エネルギー発電促進賦課金も請求されない
タダ電の料金は安いのか?検証
前述のアイティメディアの記事によると、電気料金の目安について、エスエナジーによる以下の発言がありました。これらを検証したいと思います。
①「154kWhまでであれば完全に0円でご利用いただける」
②「300kWh以上で大手電気会社(東京電力)と同じくらい」
まず、①「154kWhまでであれば完全に0円でご利用いただける」については真実だと思います。ただし、現在の約款が変更されない限り、という条件付きになります。約款の変更はエスエナジーによって行われ、開示時点で即座に効力を持つものと記載されています。
また、②「300kWh以上で大手電気会社(東京電力)と同じくらい」についてはかなり怪しいです。
なぜなら、以下の表が公表されていますが、この表内で計算が合いません。
燃料費調整額(7.91円/kWh)、再エネ賦課金(1.4円/kWh)の前提で計算しているとのことなので、料金は1kWhあたり(65円+7.91円+1.4円)=74.31円になるはずです。
使用量が310kWhの場合、74.31円×310kWh=23,036円なので、1万円割引されたとしても、支払い金額は13,036円です。ちなみに、タダ電の約款には10,000円以内を1円でも超えると、燃料費調整額、再エネ賦課金ともに請求するとしっかり明記してあります。
このモデルだと300kWhを超える前に、タダ電は東京電力より割高になると思われます
また、燃料費調整額は東京電力の規制料金と違って上限がないはずなので、今後も値上がりする可能性は十分にあります。
なので、現在、規制料金プランで200~300kWhくらい使用している人は、確実に安くなるわけではないということを理解したほうがよいでしょう。
まとめ|タダより怖いものはない
「タダで電気が使える」というインパクトは強いですが、実際にゼロ円で運用するのはハードルが高そうです。また、エスエナジーという会社も実績が不明で、サービスの持続性について確固たる情報が得られませんでした。
「タダより怖いものはない」ということを肝に銘じる必要がありそうです。
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それでは^^
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