あなたは、映画『コンテイジョン』に興味がありますね?
『コンテイジョン』は、2011年公開のスティーブン・ソダーバーグ監督の映画。
約10年前のこの映画が、現在の新型コロナウイルスの流行によってその先見性が改めて評価されています。
ただ、映画を年間100本観ている筆者が、改めてこの映画を観返したところ、現在における世界の状況と共通点や相違点をそれぞれ見つけました。
この記事ではそれらの比較を、映画のあらすじやラストとともに解説します。
※本記事では、ストーリーのネタバレやラストのオチについて扱います。
事前情報を入れたくない方は、先に映画をご覧になってからお読みください。
『コンテイジョン』の基本情報
キャスト、スタッフ
出演 | スタッフ・キャスト |
---|---|
ドクター・レオノーラ・オランテス |
マリオン・コティヤール |
ミッチ・エムホフ |
マット・デイモン |
エリス・チーヴァー博士 |
ローレンス・フィッシュバーン |
アラン・クラムウィディ |
ジュード・ロウ |
ベス・エムホフ |
グウィネス・パルトロー |
ドクター・エリン・ミアーズ |
ケイト・ウィンスレット |
監督 |
スティーヴン・ソダーバーグ |
脚本 |
スコット・Z・バーンズ |
製作 |
マイケル・シャンバーグ |
ステイシー・シェア |
|
グレゴリー・ジェイコブズ |
本作の特徴
誘拐グループに拉致されるドクター役としてマリオン・コティヤール、最愛の妻とその連れ子を亡くし、娘とともに生きていくこととなったミッチ役としてマット・デイモン。
また、ブログを通じて”特効薬”の情報を拡散するアラン役としてジュード・ロウなど、豪華なキャストです。
監督は、『オーシャンズ』シリーズや『さらば、ベルリン』といった多数の代表作をもつ、スティーブン・ソダーバーグ。
同氏は2000年の作品『トラフィック』では、米アカデミー監督賞を受賞しています。
あらすじ
香港出張から帰ったベスは、咳と発熱に苦しみながらも、夫が待つ自宅に帰らず、シカゴで恋人と密会する。その頃、彼女と同じ症状の人間が世界各地で亡くなり始めていた。フリージャーナリストのアランは、政府が伝染病を隠しているとブログで指摘するが…。
ウィルスの感染拡大によって世界が混乱に陥ってゆく様を、オールスターキャストと徹底したリアリズムで描き出す。ネット経由の情報拡散を踏まえた物語は、圧倒的な緊迫感。
(U-NEXT作品ページから)
ラストのネタバレ
ここからいきなり最大のネタバレをします。
物語は、「感染発生2日目」から始まります。
「感染発生1日目」にあたるDay 1は、物語のラストで明かされるのです。
それは第1感染者となったベスが勤める会社「アンダーソン社」が、開発によって森林をなぎ倒すシーン。
森林開発によって住むところを失った野生のコウモリは、人里近くに降りてきます。
そこでコウモリのバナナの食べカスを家畜の豚が摂取することで、ウイルスが生まれたのです。
やがてその豚は流通によって香港の料理屋に渡り、コックが調理を開始。
調理の途中、手も洗わずにベスと握手しながら記念撮影をすることで、ウイルスが伝播していく……。という流れ。
ただし、劇中ではたまたまアンダーソン社が発端となっていましたが、この映画のメッセージとしては「人間の業」や「因果応報」とかを説きたい訳ではないと思います。
森林開発をしている会社ならどこでも成立する訳ですから。
わざわざ伐採をしていたのがアンダーソン社であることを映したのは、視聴者に対する皮肉というか、「そうだったのね」と納得させるための仕掛けだと考えられます。
この映画が現在の私たちに伝えてくれているのは、「噂が広まっていくのはウイルスよりも恐ろしいこと」と、「よく手を洗いましょう」の2つに尽きるでしょう。
新型コロナとの共通点
『コンテイジョン』と現在の新型コロナの状況を比較すると、共通点はこんな感じです。
- 中国圏から発生(映画では香港の九龍から)
- 旅行者を介して、世界で同時多発的に流行
- 隣人との接触を極端に避けるように(アンドリューの件)
- 飛沫感染、手で触れたものから感染
- SARSと似た症状
- WHOやCDCはウイルス封じ込めに失敗
- ネットのデマ情報で、スーパーが大混雑
- 暴動や住居侵入などが多発する
このように並べてみると、思った以上に現実との共通点が非常に多い。
関係者へのヒアリングやシミュレーションが丹念に重ねられた作品であることがわかります。
新型コロナとの相違点
逆に『コンテイジョン』と現在の新型コロナの状況を比較すると、相違点はこんな感じです。
- 生まれつき免疫を持っている人がいる(ミッチの例)
- 潜伏期間は10日より短い
- 感染者の死亡率は約20%
- 容体の悪化が早い
- 豚とコウモリを合わせたようなウイルス
- 20日ほどでウイルスが変異し、R-O(人から人へ感染する数)が2倍くらいになる
- 感染者の初確認から130日ほどで、ワクチンが量産開始
- SNSでなくブログからデマが感染
SNSがほとんど登場しないのは、約10年前の映画だからというのが大きいでしょう。
当時でもTwitterやFacebookはありましたが、現在ほど広まっていませんでした。
また、ウイルスの悪化スピードが早い割に(初確認から20日で変異)、130日ほどでワクチンが量産体制になるというのは映画ならではです。
現実よりもCDCがはるかに優秀でした(苦笑)
『コンテイジョン』2つの疑問
このように優れた分析によって構成された『コンテイジョン』ですが、本作を3度観た筆者でも、引っかかってしまった2つの疑問を紹介します。
なぜワクチンの配布は抽選方式?
感染症発生から130日目付近に、ワクチンの量産が始まります。
それでも当然、全世界に行き渡らせるには製造量が足りないので、抽選方式となります。
ただし、数百日単位でかかるワクチンの抽選方法を、「誕生日」というオープンな個人情報で決めてしまうことがかなり不自然でした。
これを現実に行えば、誕生日を公表している著名人の家などに、強盗が大勢押し入ることになってしまうと思います。
これは特に特徴的な部分ですが、流行時の暴動から収束に向かっていく様子があっけないと感じてしまいます。
もしかしたら意図があるのかもしれませんが、非現実感が残りました。
レオノーラ医師が空港で逃げ出した理由は?
WHOのレオノーラ医師(マリオン・コティヤール)は、物語の冒頭で香港へ調査に入り、監視カメラの膨大な映像をチェックすることで、ベス(グウィネス・パルトロウ)が第1発症者であることに気づきます。
その後彼女は、香港衛生部の担当者スン・フェンにより誘拐。
ワクチンを優先的に得られるまで彼の村で監禁されることになります。
WHOがワクチンを誘拐グループに渡したことで彼女は解放されますが、その後WHO担当者は彼女に「渡したのは偽薬だ。中国政府は誘拐犯と取引しない」と発言。
それを聞いたレオノーラは、ショックを受けた表情で空港から逃げ出してしまいます。
筆者は、このシーンからレオノーラは偽薬を服用したことによる副作用を恐れて、医療機関へ向かったのかと思いました。
ただ、WHO担当者の発言では「プラセボ」と言っていることから、毒などではなく単に効果のない薬を服用したのだと思われます。
実際の逃げ出した理由は、彼女がスンの村で大勢の子どもたちの教師代わりになっていたことから、子どもたちや村に愛着を持ってしまったから。
もし村の子どもたちが偽薬を本物だと思い込んで服用して、外出してしまったら、感染症に罹ってしまう可能性が高いのです。
あの小さな村だったら、ウイルスの流行で壊滅してしまうかもしれません。
レオノーラは、受け取ったのが偽薬であることを伝えるために、スンに電話をかけにいったと解釈するのが自然でしょう。
そこは劇中であえて細かく描かれていませんが、人間らしい部分が描かれていて好きなシーンです。
まとめ
ラストのシーンは、同じアジア人としては少し後味が悪いものの、皮肉が効いていてニヤリとさせられる結末でした。
このコロナ禍の時期だからこそ、見る価値がある1作だと思います。
オススメ^^
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